平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 桜子は主将めがけて踏み出す。

 ドンッ!

「こてー」

 バシッ!!

 桜子の竹刀が主将の小手に振り下ろされた。

「一本!」

 副主将が叫び、旗を上げた。

 桜子の一本に観客たちが「キャーッ」と黄色い声援を送る。

 ふたりは開始線に戻り、きっちり礼をする。

「ありがとうございました!」

 双方の挨拶が終わり、主将が面を外しながら、桜子に近づいて来た。

「桜先輩には一度も勝てないで終わってしまいました」

 面の下のきりっとしたショートヘアの主将の顔に汗が光り、彼女は日本手拭いで拭く。

 桜子も面を取り、後輩ににっこりする。

「朱美(あけみ)は強くなったよ。これからもがんばってね。みんなを引っ張っていかなきゃね」
「はい!」

 朱美は憧れである桜子からの激励を嬉しそうに笑った。


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