平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「桜先輩、ご指導ありがとうございました! お疲れさまでした!」

 体育館を出ていく桜子に、後輩たちが口々に挨拶していく。

 桜子が更衣室へ向かっていると、生徒会会長である親友の前田(マエダ)美香(ミカ)と廊下でバッタリ会う。美香はショートカットで姉御肌の友人だ。

「桜っ! 部活出ていたの?」
「うん。暇だから」

 桜子はにっこり笑う。

「剣道ばっかりだから、彼氏が出来ないのよ。残念な美少女よね~」
「そんなこと言って。美香だって、いないじゃない」

 桜子はコロコロ笑いながら、美香の肩を突っつく。

「私は別に可愛くないし。桜に彼氏がいないのが我が校の七不思議よ」
「七不思議って……」

 桜子は呆気に取られてから、親友に微笑む。

「美香はまだまだ生徒会の仕事があるの?」
「そうなの。卒業式に向けてね。追い出されるほうなのに、やることが色々あるんだ。桜子、早く着替えて。風邪ひいちゃうよ」
「うん。じゃあ、また明日ね!」

 真冬に汗をかいた剣道着姿。確かに身体が冷えてきたようだと、桜子は美香と別れて更衣室へ急いだ。


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