平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「おばあさん……目が見え――」
「騙して悪かったね。お前のことを観察させてもらっていたんだよ」

 驚きすぎて、ポカンと口を開ける桜子だ。

「お前は悪い者ではない。私は人を見る目は確かだよ。孫が失礼したね」

 洗婆だと思っていた老婆は、イアニスの祖母であるカリスタ・カフィだった。イアニスの頭が上がらない人物である。

「そのようなことを……。いつこの娘と会ったんですか? 危ないではないですか」

 イアニスは深いため息を漏らす。

「だからお前の目は節穴かと言っているんだよ。肩を痛めているその子は私に洗わせなかった。その間も、私を気遣っていたよ。私の目が見えることに気づかなかった鈍感な娘でもあるが」

 カリスタは、桜子が時々溜めた涙を水で流しているところを目にし、同情を覚えた。

「それにその棒は娘の言うとおり、掴んだら怪我をしてしまうよ。戦いたくないのではなく、相手を思いやっているんだ」

 窮地に陥っていた桜子は、カリスタが味方になってくれて、足の力が失われるくらい安堵した。

「ディオンさまには私が報告する。私がこの娘の世話係をしてもいい」
「その必要はない」

 入口に姿を見せたのは、ディオンだ。まるでその場がスポットライトを当てたかのような光り輝くディオンに、桜子はやはり彼だけは別世界の人だと、目を瞬かせる。瞬きをしているうちに消えてしまうのではないかと思うほどだ。

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