平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 カリスタに案内された部屋は、先ほどまでの内装とは異なり、薄布があしらわれ、座り心地のよさそうな長椅子にふかふかの寝台。
 
 特別な部屋なのだと思うと、桜子だが開いた口が塞がらない。

「こ、こんなところでなくてもいいんです!」
「いえいえ。あなたのためではなく、私のためです。なにぶん年老いて、階段がつらいのでね」

 豪華で美しい部屋に恐れをなす桜子に、カリスタは皺のある顔をほころばせる。

「お世話は大丈夫です」
「なにを言うんだい。私は殿下にあなたの世話を頼まれたんだよ」

 優しいカリスタに桜子は涙が出そうだ。

「おばあさんは……私のことを、信用してくれるのですか?」

 不安げな瞳を向けた桜子の頬を、カリスタはそっと撫でる。

「もちろんだよ。殿下も信じてくださっている。殿下の人を見る目は確かだからね。それよりもおかけなさい」

 カリスタは寝台の端に桜子を座らせた。そこで、エルマが瓶に入った軟膏を持って入ってくる。

 エルマはカリスタに礼をして、桜子の前へ足を進めた。

「これは打撲や捻挫に効く塗り薬よ」

 手のひらに乗るくらいの瓶を開けて、エルマが塗ろうとする。

「自分でやります」
「いいえ。殿下の命令は絶対です」

 手を差し出した桜子には瓶を渡さず、寝台に座るように言う。


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