平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
 スカートから伸びたスラリと長い足と、冬場でも短い白いソックスと黒い革靴は、いつも通り。

(寒いから足の感覚がおかしいのかも)

 手に持っていた竹刀袋を、背中に来るように斜めがけにしてから、再び歩きだす。

 もうすぐ駅、というところの交差点に来た。

 横断歩道で待っていると、小学生の男の子が隣に立った。有名進学塾のカバンを持っている。

(まだ低学年みたいなのに、塾か……大変だな)

 信号が青になり、桜子が歩く前に男の子が先に歩を進めた。

 そのとき――。

 ――プップー!

 耳をつんざくようなクラクション音が、その場に鳴り響く。

 桜子はうるさいな、と思いながら音のほうへ顔をやった。

 トラックだった。止まらずに左折してきたのだ。

 桜子が息を呑むのと、駆け出すのは同時だった。助けなければと思ったのだ。

「危ないっ!!」

 トラックはブレーキもかけずにどんどん近づいてくる。

 金縛りにあったように動けない男の子のコートの襟を掴んだ桜子はこれ以上ないほどの力で、引き戻す。

 次の瞬間、目の前に迫るトラックに、動くことも出来ずに、桜子は肩をすくめてギュッと目を閉じた。

(ぶつかるっ!)

 桜子がそう思った瞬間、強い衝撃を身体に受けて飛ばされた。


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