平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました

ぼそぼそとした話し声で、桜子は目を開けた。彼女は冷たい土の上に仰向けで寝ていた。

　見慣れない光景と、覆いかぶさるようにして桜子を見ている、日本人ではない顔立ちの男たちにギョッとなり、身体を起こす。

（私……）

　エメラルド色の外国人のような 瞳で見つめられ、桜子は戸惑う。そこで、自分がトラックにぶつかったことを思い出した。

（あ！）

　クラクションと共に走ってきたトラック。桜子は全身を打ったはず。普通であれば血だらけになり、複雑骨折、内臓破裂は免れないであろう事故だった。

（私、夢を見ているの……？　男の子は無事……？）

　引き戻した男の子が縁石のほうに転がったのを見たのが最後だ。

　自分は病院の集中治療室にいて、たくさんの管に繋がれているのではないかと考える。

（もしくは……私……死んだの……？）

　ニヤニヤと桜子を見ている男たちはあきらかに外国人で、そのうちの男のひとりが口を開く。

「変な格好の娘だな」

　桜子の耳から聞こえてくる言葉の発音はまったく知らないものだが、言っていることがなぜかわかる。

　やっぱり自分は事故で意識を失っており、夢を見ているのだと思った。