平凡女子ですが、トリップしたら異世界を救うことになりました
「ディオンさまがここにおられるのは、珍しいですね。楽器は弾かれないのですか?」
近寄りがたく見えるディオンが相手でも、イアニスはそれをものともせずに言葉をかけられる存在だ。
「そんな気分ではない。楽器を弾く気ならば、とっくに娯楽室にいる」
そっけない返事に、イアニスは『おや?』というように眉を上げてディオンに近づく。
「ザイダのことで、ディオンさまが頭を悩ませる必要はありません」
小さい頃から兄のように面倒を見ていたイアニスは、ディオンの考えていることはほぼわかる。
兄弟皇子はいるが、それぞれ母親が違い、交流もほとんどない。そしてディオンに至っては亡き母から、兄弟の争いを避けるために、国務に関わらないよう言われ続けていた。
そのせいもあり、ディオンが皇帝のいるベルタッジア宮殿へ行くことはほとんどない。他の皇子らは国務に関わり、月に一度はベルタッジア宮殿へ赴くのだが。
「イアニス、ザイダの処分は私が決める」
「ディオンさま?」
当惑するイアニスに、ディオンはフッと微笑む。
「私はサクラに弱いようだ。あの娘の願いをすべて叶えてやりたくなる」
「なにを仰って……まさか、ザイダの罪はなしにしろと……?」
「そのまさかだ。サクラが望んでいない」
ディオンは桜子を思い浮かべて、さらに笑みが深まる。
近寄りがたく見えるディオンが相手でも、イアニスはそれをものともせずに言葉をかけられる存在だ。
「そんな気分ではない。楽器を弾く気ならば、とっくに娯楽室にいる」
そっけない返事に、イアニスは『おや?』というように眉を上げてディオンに近づく。
「ザイダのことで、ディオンさまが頭を悩ませる必要はありません」
小さい頃から兄のように面倒を見ていたイアニスは、ディオンの考えていることはほぼわかる。
兄弟皇子はいるが、それぞれ母親が違い、交流もほとんどない。そしてディオンに至っては亡き母から、兄弟の争いを避けるために、国務に関わらないよう言われ続けていた。
そのせいもあり、ディオンが皇帝のいるベルタッジア宮殿へ行くことはほとんどない。他の皇子らは国務に関わり、月に一度はベルタッジア宮殿へ赴くのだが。
「イアニス、ザイダの処分は私が決める」
「ディオンさま?」
当惑するイアニスに、ディオンはフッと微笑む。
「私はサクラに弱いようだ。あの娘の願いをすべて叶えてやりたくなる」
「なにを仰って……まさか、ザイダの罪はなしにしろと……?」
「そのまさかだ。サクラが望んでいない」
ディオンは桜子を思い浮かべて、さらに笑みが深まる。