何かおさがしですか?
 
「やっぱりありました」
 
 引っ込みのつかなくなった私は、その免許証の存在を認めざるを得なくなり、顔からバックドラフトする思いで、カウンターの向こうで冷ややかな視線を投げる無愛想な店員さんに、そそくさと手渡した。
 
 店員さんは仏頂面のまま私の免許証をチラッと見て眼を切った後、すぐさまハッと一瞬眼を剥いて、少し驚いたように再び免許証を凝視していた。(何もそんなにオーバーなリアクションしなくてもいいのに!)
 
 やがて会員管理しているレジのコンピュータのキーボードをひとしきり叩いて確認作業を終えると、努めて冷静を装うように返してくれた。
 たったいま私の意志は決定していた。
 この辱めを受けた屈辱の地には二度と足を踏み入れますまい。
 そう固く決意したのだった。
 
 
「新作ですので返却は明日になります。有難うございました」
 
 何故かさっきより優しい口調に変わった店員さんの低い声をちょっぴり嫌味に感じつつ、すぐさま強烈な絶望感に絶句し、一歩遅れて押し寄せる羞恥心に、再び顔面からバックドラフト状態だった。
 
 そうだった‥‥‥。
 
 明日もDVDを返却しに、またこのお店に来なくちゃいけなかったんだ。
 
 もう二度とこのお店には訪れないという私の固い決意は、たった数秒で脆くも崩れ去った。
 
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