何かおさがしですか?
 
 お店を出た後、とぼとぼとした足取りで帰る私の心情を察する様子も見せずに、涼子は私にぶつかるように腕を組んできて意気軒昂に叫んだ。
 
「次はコンビニ行くぞー」 
 ポジティブに考えるならば、傷心癖のある私は能天気な彼女の明るさに、結果的に救われているのかも知れない。
 
「ところで理英、半年前に入会した時には身分証明って何を出したん?」
 
「何だっけかな、たぶん保険証だったと思う」
 
「それやったら写真が付いとらんでも良かったのかもな、きっと」
 
「‥‥‥確かに」
 
 どちらにしろ保険証も今は持っていなかったけど、なんだかわざわざ恥ずかしい思いをしたのが骨折り損だった気もして、思わず二人で笑ってしまった。
 そして笑いながら軽く肘で涼子の脇腹を突っ突いた。
 私が免許証の写真を気にしていることに気付いていながら、意地悪してきた涼子に対してのささやかな仕返しだ。
 涼子は舌を出して可愛らしく謝意を見せて言う。
 
「お弁当おごったるよ」
 
 これが涼子と私の免罪符のようないつものやり取りだった。
 
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