何かおさがしですか?
      2
 
「なんかいまいちだったね」
 
 瞬く間に2本のDVDを見終わり、となりのソファに眼をやると、涼子は仰け反るように背もたれに後頭部を乗せて半口を開けて眼を閉じていた。
 これもいつものことだ。
 
 2本目の映画を観ている途中で彼女はすやすやと適度な仮眠につくのが慣わしとなっていた。
 私は彼女を起こさないようにそっと台所へ行き、粉末のミルクココアを二人分作って部屋へ戻ると、いつの間にか涼子は目を覚ましていて、コンビニで買ったポテトチップをいかにも美味しそうにボリボリとむさぼり食べていた。
 
「理英、ご両親は年末帰ってこんの?」
 
 口いっぱいに頬張りながら涼子が聞いてきた。
 
「うん、今年は帰ってこないみたい」
 
「そうなんや、寂しくないの?」
 
「そうでもないよ」
 
 強がっているわけじゃないけど、語尾に力を込めて私はそう答えた。
 
 貿易関係の大手商社に30年近く勤務している父は、海外出張が多く、年2、3度しか日本に帰ってこない。
 しかも今年の夏に一度帰ってきた時に、寂しいと言って母まで勤務先のオーストラリアに連れて行ってしまった。
 まさか今年から短大に通い始めたばかりの私まで、オーストラリアについて行くわけにもいかず、私もそれを望んではいなかった。
 
 おかげで一軒家でしばらく一人暮らしをすることになったけど、それも自由気ままで悪くない。
 
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