何かおさがしですか?
よく女同士の【親友】関係は成立しないと世間で言われているのを耳にする。
それは異性関係がどちらか一方や、あるいは双方の間に関わった時に相手に対しての情緒的な嫉妬心が、男性同士よりも女性同士の方が強いためだと説かれていたりする。
そんな諸説を鑑みながらも、はっきりと自信を持って言える事は、私と涼子は普通の友達より仲の良い関係だと信じている事だ。
それを【親友】という形容で表現すべきものかどうか、その判断基準は分からない。
もっとも普通の友達の【普通】という表現も同時に曖昧で抽象的なものだと思うけれど‥‥。
「ねえ、そう言やさあ」
ホットココアを飲み干しながら独特のイントネーションで涼子が呟いた。
「DVD借りる時、あの店員さんメッチャ理英のこと見てたやろ」
「そう?」
あの時に店員さんを見る余裕など、私のほうにはあるわけなかった。
「ずっと見てたで」
また涼子の根も葉もない冷やかしだろう。
その手には引っ掛からないわ、と気構える。
「それは、あの免許証の写真がまるで別人だったからだよ」
「別人?」
別人は自分でも言い過ぎたけど、私は付け加えて言った。