何かおさがしですか?
「ウチは夏まで彼氏いましたぁ。理英は何年彼氏いないんよ」
私はその一言で完全に言い負かされた。
何年も彼氏がいないとは甚だ失敬な言われようだが、かと言って全く的を外しているわけでもなく、実際に最新の恋愛からは一年半ぐらいは遠ざかっているだろうか。
思えば、短大に入ってサークルだとか合コンだとか環境が変われば、また新たな出会いのチャンスもあるだろうって、仄かに期待していたんだけれど、特に何事も起こらないまま、なんとなく今年も12月まで来てしまった。
やっぱり環境のせいではなく、自分自身が変わらないとダメなのかなぁと反省してしまう。
「どこかで見たことのあるような人ではあったけどね」
そう言ってさっきの店員さんの顔を思い出してみる。
この街は(市内)は、比較的に人口は多いのだけれども、昔から閉鎖的な風潮があって、人の流動が鈍重な土地柄みたいだ。
年齢が近い者同士だと、知り合った人が友達の友達のお兄さんだったとか、先輩の彼氏の妹だったとか、それは日本全国のローカル地域ではよくある話だと思うけど、複雑に絡み合った糸を手繰ると、必ず共通の知人に行き着いたりする。
街の雑踏の無意識に擦れ違っただけの人でも、潜在意識の中に記憶のデータが残存していて、改めて会った時に、あたかも以前から面識があったような錯覚に陥ることも人間にはしばしばあるらしい。
いわゆる『デジャヴ』と言われている事なのだろうか。