何かおさがしですか?
 
「明日の返却の時にまたあの店員さんがおったら、じっくり見てみなよ」
 
「う、うん」
 
 なぜ涼子がそこまであの店員さんにこだわるのか分からなかったけど、私は彼女の勢いに押されて、反射的な生返事を返してしまった。
 
 やがて話題は変わり、いつものように涼子がコンパで知り合った男の子の話(やっぱり猿顔のガッチリ体型)や、流行の若手お笑い芸人の話題なんかで盛り上がった。
 チャンポンな方言混じりでマシンガントークを乱射する涼子に、ふむふむと聞き役に徹する。
 私は性格的に引っ込み思案なところがあるから、彼女のように会話を引っ張ってリードしてくれる人のほうが、楽しくて居心地がいい。
 涼子は引っ越しと転校を繰り返してきて、様々な土地柄、人柄、風土風習なんかを見たり、体感してきただけあって、話題が豊富で知識の引き出しがびっくりするほど沢山ある。
 となり町から引っ越したぐらいしか経験の無い私にとっては、涼子と比較して決定的に欠落した部分だった。
 
 そう言えばこんな出来事があった。
 
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