何かおさがしですか?
涼子のアルバイト
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 翌朝目が覚めると、時計の針は11時を差していた。
 正確には、すでに朝とは言える時間ではなかったけど、この時期は日照斜度が低いのと、薄曇りの天気のせいか、窓から射す外光はやんわりとした暖色感の溶け込みが乏しく、正午近くとは思えない淡々とした色合いで、部屋の中の陰影を曖昧にぼかしていた。
 私のベッドの下では、母の使っていた薄いグリーンの柄を纏う布団の中に、涼子が半口を開いて、まだ寝息かいている。
 
 やがて午後も過ぎ、西に陽が傾くまでダラダラと過ごしていたが、夕方から用事があると言って、涼子は帰り支度を始めた。
 
「駅まで送るよ」
 
 私も慌てて着替え始めた。
 
 
 私は恐竜なので‥‥‥。
           
 そういう言い方をすると語弊を招くけど、爬虫類や両生類のような変温動物ではないだろうかと思うほど寒さが苦手で、ジャンパーの上にハーフコートを重ね着した完全防寒状態に装備を整えた。(近年の研究では、恐竜も我々哺乳類と同じ定温動物だったとの説もある)
 
 私は涼子を駅まで送る途中で、昨日レンタルしたDVDを返却してしまおうと考え、私の倍以上の時間を掛けて、やけに丹念にメイクを整える涼子を待って、一緒に家を出た。
 
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