何かおさがしですか?
 
 店員さんは、店内に入って来た私たちの存在に気が付くと、カウンター内にいる他のアルバイトらしき従業員さんをさり気なく制して、私たちが近づくよりも一歩早く返却カウンターで待ち構えていた。
 心持ち昨日の仏頂面とは違い、若干ではあるけど、にこやかな表情で私たちを直視している。
 私は平静を装って返却するDVDを手渡した。
 
「ありがとうございます」 
 店員さんは、すべてを見透かしているかのような、すんなりとした一言を発した。
 その物腰からして、店内に入って来た私たちの顔を見た時点で、昨日の二人組が返却しに来たことがしっかり彼に認識されてしまっているようだ。
 顔を覚えられているということは、やっぱりあのブサイク顔の免許証写真のインパクトのせいに違いない。
 
「あの、DVDの中味が一枚入っていませんけど」
 
 返却したDVDの中味を確認していた店員さんが、帰ろうとした私たちを不意に呼び止めた。
 
「えっ!?」
 
 私と涼子は顔を見合わせた。
 
 しまったぁ!!
 
 部屋のDVDデッキの中に入れっぱなしで忘れてきたことは明白だった。
 
「すみません。あとでまた返しに来ます」
 
 辱めの上塗りだ。
 またしてもこの場所で顔からバックドラフトするハメになった。
 一方、涼子は冷やかに笑っている。
 
< 23 / 30 >

この作品をシェア

pagetop