何かおさがしですか?
「バイトするようになったら金曜の夜は、もう一緒にビデオとか見れねぐなるかもなぁ」
そう言って涼子はすまなそうな顔をして見せた。
涼子がバイトを始めるなら仕方ないし、私は構わないけど、そうなると昨夜の宴が最後の晩餐になったのかと思い返せば、少し寂寥感が込み上げてくる。
「理英に寂しい思いをさせるかと思ってな、言い出しにくかったんや」
ちょっと臭いけど泣かせるセリフだ。
「何言ってるのよ、もともとは涼子を慰めるために始めたんでしょう」
「そうやったっけ?」
「そうそう」
涼子は自分が恥ずかしいことは、とぼけて誤魔化すのが得意だ。
「理英も何かバイトしたらええやん?」
「どうして?」
「クリスマスとかも彼氏無しじゃ予定は未定やろ」
「‥‥まあね‥」
「年末、年始にご両親も帰って来んやったら、暇でしゃあないやないの?」
あまりにも痛いところを突かれたので、私は不貞腐れ唇を尖らせた。
確かに涼子の言う通りだ。
いや、言われるまでもなくここ数日は、自分でも年末、年始の過ごし方をどうするか気に掛けていたところだった。