何かおさがしですか?
 
 でも人間と着物には柄がある。
 私は涼子みたいにお水の仕事なんて出来る柄じゃないし、特別やりたいとは思わない。
 
 それにお酒も飲めない。
 いや、これは誤解を招く言い方だ。
 体裁的に言うならば、高校を卒業して一年目の19歳。
 またギリギリ法律的には飲酒を許されている年齢ではない。
 ちょっと生真面目すぎる考え方だろうか。
 
 そして、あえて付け加えて言うと、私は全くの下戸のようなのだ。
 
 高校時代、クラスの悪い友達連中に付き合わされて、カラオケボックスでウイスキーか何かの水割りを飲まされた時には、コップ半分で気を失って、お店の人に救急車を呼ばれてしまい(学校にはバレなかったが)後で母にひどく怒られた。
 さらにもっと子供の頃には、近所の人のお土産で貰ったお酒入りのチョコレート菓子を一個食べただけで熱を出し、翌日の小学校を休んだ記憶がある。
 一説にはお酒の飲めない体質の下戸という存在は東洋人だけで、西洋人には存在しないなんて話を聞いたことがあるけど、本当だろうか?
 そしてお酒を一滴も飲めない水商売の方がいるとしたら、どう対応しているのだろうか。
 なんだかそんなことが単純に疑問に思う。
 
 
「そう言えば、さっきのビデオ屋さんでバイト募集してたよ」
 
 徐に涼子が言った。
 
「そうだった?」
 
「理英は家が近いし、映画とか好きだから行ってみたら」
 
「えっ!?」
 
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