何かおさがしですか?
しばらくして、ふと気付くと、あの店員さんが片手にビデオカメラを携えて、アルバイトらしい別の店員さんを引き連れて、店内を巡回している。
何をしているんだろうと彼らの様子を見ていると、DVDやビデオのパッケージが並ぶ棚の前で、指を差して喋っている。
隣の通路までやってきたので、私は棚越しに聞き耳を立ててみた。
「アルバイトの中田です。ぼくのこのコーナーのおすすめ作品は‥‥‥」
どうやら、お店の宣伝ビデオでも撮っているようだ。
大型チェーン店とは違い、こういう小さな会社のお店は、そのお店なりに何か色々な企画を立てて、営業努力をしているんだなぁと感心した。
私は棚で仕切られた通路を歩き回り、疎らに店内に散らばっている他のお客さんと肩がぶつかりながら、ラブロマンスの映画コーナーの前で立ち止まった。
最近こういうジャンルの映画を観てないなぁ‥‥‥。
涼子と映画の自宅鑑賞会を始めてから、観ているジャンルはアクション系やSFものばかりで、泣けるような恋愛映画なんて久しくその存在自体も忘れ掛けていた。
でも一旦忘れていたものを思い出すと、連なってある重要な記憶を思い出した。
半年前にこのお店に来て入会した目的、そしてその途中で諦めてしまったさがしものを。