何かおさがしですか?
「何でやぁ、どうしても観たいわぁ」
と涼子が悔しそうに言った。
「でもどうするの?」
反対に少し素っ気ない言い方を私がした。
「他の店にも探しに行ってみっぺ」
「えぇ―っ!!」
私は感嘆符をそのまま口に出してしまった。
いつも諦めの早い涼子にしては実に珍しい思考パターンだ。
そうして私たちは何処か他のビデオ店に探しに行くことになり、思案の末に候補として挙がったのが私の家の近くのこの店だった。
私としても、あてもなく遠距離のお店まで電車を乗り継いだりして、彷徨い探すのは面倒だった。
きっと涼子も同じ考えだっただろうし、私の家の近くの店での探索で妥協したのはごく自然で無難な選択だった。
それでも、いつもはもっと淡泊で物事を深く追求しない私たちのコンビにしては、精一杯で上出来な粘り腰だったと思う。
「やっぱり無いやん」
結局、涼子の切望していた映画のDVDは、やはりこのお店でもすべてレンタル中だった。
ごちゃごちゃとポップやクリスマスの飾り物で賑わう店内には、金曜の夕刻だというのに、お客さんの数は意外にも疎らだった。
ひょっとしてあの大型チェーン店に人が流れてしまっているのだろうか。