何かおさがしですか?
「ご本人確認が出来ないと会員証の再発行が出来ませんし、ビデオもDVDもお貸し出来ませんが」
店員さんがさらに追い討ちを掛けてくる。
わかってます!!
私はやむを得ず背後で他人事のように涼し気な顔をして突っ立っている涼子に助けを求めた。
「涼子、免許証とか持ってる? 身分証明になるものが必要なんだけど」
最悪の場合、涼子に入会してもらって会員証を作るしかないだろうと考えた。
ところが涼子から返ってきた答えはこうだった。
「学生証じゃダメなん? 理英持ってるやろ」
全くこの不精な元陸上部のエースときたら、こういう時には自分は前に出ようとせず、人の後ろに付くなんて中距離選手に似付かわしくない、やけに駆け引き上手で計算高いスプリンターだ。
けれど一つだけ良いアドバイスを提供してくれた。
「学生証でもいいですか?」
半信半疑だったけど、恐る恐る店員さんに聞いてみた。
「学生証には顔写真が付いてますよね。それとお名前とご住所が確認出来れば大丈夫です」
ラッキー!!
学生証の写真はコンタクトにしていてパーフェクトメイクで髪型バッチリなお気に入りの写真なのだ。
これなら人前に出せるだけの耐久性を充分兼ね備えている。
でも学生証に自宅の住所なんて書いてあったかどうかなんて覚えてなかったから、ちょっと不安も感じつつ、手にした財布を開けて学生証の大捜索を始めた。
まとめて財布の中に突っ込んであったカード類をワシ掴みで抜き取ると、レジカウンターの上にトランプのように拡げた。
別に手品を始める訳じゃない。