OLが男子高校生を拾った話
***

朝起きるとテーブルの上に
『ご飯温めて食べてね。鍵は1階の郵便受けに入れといて』というメモと合鍵が置いてあった。

彼女は仕事に行ったのか。

俺も学校行かないとな……

朝食を食べて家を出た。


「おはよう、紫苑。遅かったな」

「うん。ちょっとね」

「ちゃんと食べてるか?」

「うん」

「困ったことがあったらいつでも言えよ?」

「ありがとう」

彼––––寺島 晴日(てらしま はるひ)は、いつも俺を気にかけてくれる。

父さんと母さんが亡くなった日も、ずっと俺のそばにいてくれた。

3年間同じクラスでいくら仲が良くても「家がなくなってOLのお姉さんの家に泊まった」なんて、言えるはずないんだけどね。


俺は就職組だから、午後の授業が終わったらすぐに下校できる。

助けてもらったお礼に何か作ろうかなって思ったけど、
……勝手に食材使ってもいいのか?

まず、お姉さんの好きな食べ物がわからない。

「晴日」

「なに?」

スマホから顔を上げた晴日に問いかける。

「今、なに食べたい?」

「んー……あ、これ!」

晴日は俺にスマホの画面を見せた。

美味しそうなミートドリアの写真だ。

「…これにしよう。ありがとう、晴日」

「え? ど、どういたしまして…?」

不思議そうな表情の彼を見なかったことにして、俺は急いで教室を出た。
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