青と雲
「もったいないよ、こんなに上手いのに」
「いいんだよ、俺は」
照れ隠しなのか頭をがしがし掻いている。
そういう姿を見るだけでも、やっぱりわたしはヨリが好きだなと気付く。
もう新しい彼女がいるかもしれないのに。
いるのかいないのか分からない彼女に対して申し訳なく思った。
「じゃあ次は数学やるか」
「うん」
大きく伸びをしてもう一度集中する。
よし、切り替えた。
「先週の続きで、今週はベクトルだった」
「あの矢印の?」
「そう。で、ひたすらその演習を今週はやったんだ。
プリントを大量に貰ったんだよ」
にやりと笑う。
「喜ぶ要素、ないと思うんだけど……」
「ない。全くない。俺は。
ソラが喜ぶかと思って」
「ないよ!わたしあの先生課題ばっかり出すから嫌い」
「文句言うなー、15分でやれー」
数学の先生の口調を真似て言う。