No border ~雨も月も…君との距離も~
シンは、一気に私の中を射ぬくと同時に 震えるような 吐息を溢す。

「 シン……ダメだよ……」

「 ……(笑) 何がっ……」

そう言って 冷やかに……瞼を閉じる シンの横顔がたまらなく美しくて 残酷。

残酷なほど……愛しい。

激しくなるシンの動きに 私は尚も、彼の背中に回した指先に 力を込める。

「…… やっぱり……ダメ。」

「 ダメじゃ……ない……」

爪の先が シンの ダメじゃないに……答える。

どうしたら……いい?

どうしたら、このまま 一緒にいられる?

どうして……このまま、ひとつでいられないのだろう。

……胸が止まるかと思う。このまま…。

シンは、息をすることも忘れて……私の奥を突き刺す。

冷たいくらい 欲望に任せて、突き立てているシンが いじらしくも……愛しすぎて 辛い。

そして……彼は乱暴に それを引き抜くと……



翔平君の言葉を、今……思い出した。

なぜか、このタイミング。

“ シンは……大切にしてくれてる? ”

大切に……

うん。

やっぱり……大切にされてるかなんて よくわからなくて……

ただ 思うのは、

“ 私は シンを 大切にしたい。”

弱さとか 無茶とか 後先を考えない頼りない一面を持ったシンに……“ 大切だよ ”と言ってあげたい。

そう思って、強く抱きしめた。

これ程にないくらい シンを抱きしめた。

夏の一歩手前、むせかえるような湿度の中を……半分 夢の中で目を閉じる。

白昼夢……。

シンの 睫毛は……しれっと閉じて……それでいて、熱っぽく…見つめて。

唇は……キスを降らせては……離れたり、くっついたり……じゃれてくる。

私を くすぐる彼の無邪気な態度に……本気で どうしたら 離れなくて済むのか、考えそうになる。

軽い混乱と目眩の中……玄関のドアを叩く乾いた音で 現実に引き戻された。

今……昼下がりの ど真ん中。

床に立ち込める 陽炎は……たぶん気のせいで、シンとの後遺症。

「 俺、出るよ。」

そう言って シンは、急いでスウェットに足を通して、Tシャツに首を突っ込みながら ロフトを降りた。
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