No border ~雨も月も…君との距離も~
「 妻と、5歳くらいのシンと 一緒の写真です。
今も……昔も……
一日も 二人を想わない日は 無い……と。」

私は 返事の代わりに 必死で 頷く。

声が声に ならない。

「 私の過ちのせいで、この二人の笑顔を永遠に この世から消してしまった。
私は、私にとって 一番大切な物を 自分の手で壊してしまった。

許されないけれど……

今でも、二人を愛さない日は 無いんです。」

私の 涙は止まる気配がなく……もう 隠せないくらいに 頬を伝っていた。

とても 素敵な人だと思った。

シンの お父さんは、とても魅力のある人。

だから……尚更、悲しみの重さと 償えない罪の深さに……感情が過呼吸になる。

「 二人を 今も、愛していると……それすら 本当は言ってはいけない 自分が 情けないよ。」

とても、素敵な人だと 分かる。


「 パパっーーー!」

写真のシンと 同じ年頃の 女の子が、走りよってくる。

少し 離れた所の路肩に 停めた車の助手席から、女の人が立ち上がって…私に 深々とお辞儀をした。

「 シンを…よろしくお願いします。
君が いてくれて、嬉しく 思います。」

シンの父親は、慣れた感じで 女の子を肩車すると、もう一度 私に 微笑んだ。

「 私の息子は、シンだけです。
息子の 歌う姿は……私の誇りなんです。」

私も 真っ直ぐに彼の目を見て 微笑む。

笑っても…笑ってみせても…涙は 厄介なくらいに流れる。

「 …………はいっ。」

やっと 声らしき声が、震えでた。
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