No border ~雨も月も…君との距離も~
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「 ……シン。」

私は、シーツを頭から すっぽり被って マットレスに踞る 彼に声を掛ける…。

「 ……泣いてるの? ……ねぇ、こっち向いて? 」

もちろん、素直に こっちを向く訳もなく……分かっていて声を掛ける。

「 ……シン…大丈夫…だよ。」

私は、シーツごと 小さくなっている シンの肩らしき…膨らみを抱き締めると 頬を寄せた。

「 ……傍にいて いい?」

「 ………………。」

シンは 黙って返事の代わりに 鼻を啜った。

そして……何分…何十分、こうしていたのだろう…。

しばらくして、シンは ポツリと話を始める。

子供のように……やっぱり鼻を啜りながら。

「 あいつのせいじゃん……全部…全部。
母さんを殺しといて……。
俺を 独りにして……。
勝手な事 ばっか しやがってっ!! 」

「 …………シン…。」

「 自分だけ、別の女と再婚して。
俺と母さんは、止まったまんまで……。

死んだら……止まったまんまなんだよ。」

シンは、ゆっくり起き上がると 前髪をくしゃっとしながら、お日様が傾く壁に背中をもたれされて…宙を仰ぐ。

「 あいつさぁ……。 昔、ちょっとは名前のあるギタリストで、小さかった俺にも……色んな音楽を聞かせてくれた。
ビートルズ、ローリング.ストーンズ、QUEEN、
SEX PISTOLS、そして……マイケル.ジャクソンに、KISSまで。
ジャンルも すごく幅広くて……カッコいいもんは全部、教えてくれた。」

幼いながらに、あいつのこと……“ かっけぇ~!”なんて 思ったりして。

今 思えば……翔平の書く英語歌詞が すんなり入ってくるのも、あいつのお陰かな…って、ちょっと思ってて。

音とか曲とか……そんなのが 小さい頃から 俺の側にあったのは……あいつの影響なわけで…。

俺から見て ギターを抱えた父親は 明確な夢で……憧れで……簡単に言えば ファンみたいなもんだった。

だから……かな。

母さんのことは 裏切られ感……半端なくて。

今まで 大好きだった、いい歌が……愛だの恋だの そんな歌が、全部 嘘になった。

母さんのことだけは……許せない。

「 …………シン。」

私は、そっとシンの左耳元に……手のひらを滑らす。

「 男として……許せないって、そう思うじゃん。

それなのに……。

やっぱ、俺は あいつの子でさぁ……。

ごめん……紗奈。

俺…………汚ねぇよ。

俺も あいつと同じで 汚くて。

あの頃……独りは やっぱ……淋しくて。

淋しくて……。

誰でも いいから傍にいて欲しくて。

誰でも いいから 触れてて欲しくて…… 」

「 シンだけじゃないよ。皆……そうなるよ。」

私は、シンの側で 両膝をついて、彼の頭を自分の胸に仕舞い込む。

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