No border ~雨も月も…君との距離も~
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「 インディーズ、最後のツアー……。
頑張れよぉ~!! 」

小川さんは BIG4の入り口に、ashの機材車を誘導しながら 翔平の肩をポン……と叩く。

「 しっかし……どの会場もチケット完売だって~! ? デビュー前のバンドが アリーナの会場 完売って……ash、スゴいなぁ~。」

「 小川さんや、皆がいてくれたお陰です。
ありがとうございました。」

翔平は、そう言って見送りに来てくれた後輩バンドの皆に 頭を下げた。

「 あれ? 翔平さん……シン君は?」

「 ああ~。 シンは、後から新幹線。
あいつだけ 雑誌の取材 残ってて、俺たちだけ先に機材車で……きっと、同じくらいに東京に着く予定っ!(笑) 」

「まぁ……いつでも 顔を見せに来いよ!
ここは お前らの原点だって、忘れるな。
もし……ダメだったら(笑) 遠慮しんと、帰って来いっ!!」

「 帰って来ないよっ!!(笑)って言いたいけど……小川さんに甘えて 帰って来たら……許してっ(笑) 」

「 店長……。インディーズ での ラストライブ、最終日は ここですから……。」

夏香の目が 潤んでくる。

「 200人……限定になっちゃうけど、最終日は絶対っ、ここで やりたいって……」

言葉に詰まる 夏香の代わりに タケルが 続けた。

「 メンバー 全員の思いです。
インディーズ、ラストは BIG4で……
心、決めます!!(笑) 」

「 ついに……金沢のBIG4から、BIGな4人が上京ってわけかぁ~。
あれから……25年。
伝説まで 長かったなぁーーー。」

と、小川さんは BIG4の 外壁を撫でた。

「 向かう先がBIGかどうか……は??(笑)
デビューまでの スケジュールが黒いだけで その先は……全く見えないッスよ…。」

「 いや…ashは、もうすでに BIG4の伝説だよ!」


伝説……。


翔平は 振り返ると、タクの肩を “ 行くぞっ!”と叩いた。

「 いってきますっ!!(笑) 」

「 ash、ばんざーいっ~!!」

小川さん、後輩が手を振る中、翔平とタケル、タク、夏香を乗せた 機材車が 動き出す。

「 鈴……電話する。」

数メートル……機材車の横を走る 鈴ちゃんを置いて、車は走り出す。


伝説の始まり……。


歩道に ぺしゃんと、しゃがみ込んで 鈴ちゃんは うつむいた。

アスファルトに、涙のシミが 幾つも幾つも……広がった。
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