No border ~雨も月も…君との距離も~
11章 ander the moon
午後 6時。
陽が長くなった 夕方は、心地よい 夏の風が通りすぎる。
金沢駅前の もてなしドーム。
荘厳な佇まいの 鼓門の真下。
足早に過ぎる人々を 見送る 鼓門は、夜風さえも力強く……仁王立ちのまま 受け止める。
ここは 風の通り道。
人々を、迎え見送る……力強い 通り道。
藍色に滲む 夕陽の一滴……。
月の周りだけ、ボーと明るく白んでいく…そんな空の角度を ドーム形の 屋根の隙間から見つめる。
私の手を握る シンは、自分の背中で月明かりを 遮って 美しい月白を 背負込んでいた。
より、一層……幻想的な月とシン。
アーチの鉄骨から 零れてくる月明かりに、シンの手が……私の手の平に すがる。
「 ねぇ……シン。」
「 何……?」
「 シンと私は こうやって 東京と金沢に離れてしまうのに……月は ずっとシンに ついて行くね…。
シンは、怖がって嫌がるかもしれないけれど、月は どこにいても……そこにある。
同じ……月なんだよね。」
「 ん……。そっか、そうだよね。」
「 一つしかなくて……この世に、たった一つしかなくて……私がここで見る月も シンがどこかで見る月も、同じ……なんだよね。」
「 ……うん。きっと この月は…東京にもついて来る。」
シンは、ゆっくり 月を見上げる。
私はシンの右手を 両手で握る。
大きくて肉厚はあるのに、細い指先……。
ゴツっとする 血管たち。
シンのTシャツに夜風が滑り込んで、身体のラインにシャツが絡みつく。
「 私も……ついて行きたいよ……」
私の声が 終わるか終わらないか…のうちに シンは、私を抱き寄せた。
「 シンは すごく嫌がるかもしれないけれど……
できるなら……月になって シンの足元を 照したい。シンの側で 輝きたいよ。」
シンに ついて行きたい。
「 紗奈……。」
「 月は、シンと同じペースで ついて行けるから……。」
彼は、私を抱きしめたまま もう一度……月を見上げる。
「 私……月になりたいよ。」
嘘……ついてた。
“ ここで待ってる ” とか……
“ 変わらず ここにいる ” なんて……
カッコつけてた。
その腕に すがって、ワガママを言って 困らせて……重い女だなんて 思われたくなくて…。
嘘……ついてた。
「 ホントは、ずっと一緒にいたかったよ。
シン…ダメだね 私……。
こんなこと言わずに、イイ女で見送りたかったのに。」
私は、自分の情けなさに 苦笑する。
「 紗奈……。 俺も同じ。」
シンは、笑って その腕に力を込める。
陽が長くなった 夕方は、心地よい 夏の風が通りすぎる。
金沢駅前の もてなしドーム。
荘厳な佇まいの 鼓門の真下。
足早に過ぎる人々を 見送る 鼓門は、夜風さえも力強く……仁王立ちのまま 受け止める。
ここは 風の通り道。
人々を、迎え見送る……力強い 通り道。
藍色に滲む 夕陽の一滴……。
月の周りだけ、ボーと明るく白んでいく…そんな空の角度を ドーム形の 屋根の隙間から見つめる。
私の手を握る シンは、自分の背中で月明かりを 遮って 美しい月白を 背負込んでいた。
より、一層……幻想的な月とシン。
アーチの鉄骨から 零れてくる月明かりに、シンの手が……私の手の平に すがる。
「 ねぇ……シン。」
「 何……?」
「 シンと私は こうやって 東京と金沢に離れてしまうのに……月は ずっとシンに ついて行くね…。
シンは、怖がって嫌がるかもしれないけれど、月は どこにいても……そこにある。
同じ……月なんだよね。」
「 ん……。そっか、そうだよね。」
「 一つしかなくて……この世に、たった一つしかなくて……私がここで見る月も シンがどこかで見る月も、同じ……なんだよね。」
「 ……うん。きっと この月は…東京にもついて来る。」
シンは、ゆっくり 月を見上げる。
私はシンの右手を 両手で握る。
大きくて肉厚はあるのに、細い指先……。
ゴツっとする 血管たち。
シンのTシャツに夜風が滑り込んで、身体のラインにシャツが絡みつく。
「 私も……ついて行きたいよ……」
私の声が 終わるか終わらないか…のうちに シンは、私を抱き寄せた。
「 シンは すごく嫌がるかもしれないけれど……
できるなら……月になって シンの足元を 照したい。シンの側で 輝きたいよ。」
シンに ついて行きたい。
「 紗奈……。」
「 月は、シンと同じペースで ついて行けるから……。」
彼は、私を抱きしめたまま もう一度……月を見上げる。
「 私……月になりたいよ。」
嘘……ついてた。
“ ここで待ってる ” とか……
“ 変わらず ここにいる ” なんて……
カッコつけてた。
その腕に すがって、ワガママを言って 困らせて……重い女だなんて 思われたくなくて…。
嘘……ついてた。
「 ホントは、ずっと一緒にいたかったよ。
シン…ダメだね 私……。
こんなこと言わずに、イイ女で見送りたかったのに。」
私は、自分の情けなさに 苦笑する。
「 紗奈……。 俺も同じ。」
シンは、笑って その腕に力を込める。