No border ~雨も月も…君との距離も~
2章 チクン……の理由
高校を 卒業して能登から金沢の会社へ就職した私は、同じ能登出身の鈴ちゃんと 出合ってすぐに息があった。
金沢市内の公園や 片町の隅っこで、一人路上ライブなんかを やっていた鈴ちゃんは、高校生の時から 金沢に出てきていた。
アコースティックギターを ぶら下げて、ベリーショートの彼女は遠目に見ると小柄な男の子にも見えた。
ダボついたサロペットに、肩が半分 ズリ落ちしているメンズ物のTシャツ。
その 小さな男の子に見える、女の子からは 超高音の 少し鼻にかかった 独特の歌声。
耳に残る鈴ちゃんの声と アコギは、二度目に街で
聞いた時、つい足を止めて 振り返った。
そして、いつしか ……鈴ちゃんの路上ライブの度に、私は 地面に腰をおろして 身体を揺らし、
一緒に歌を口ずさむように なった。
路上ライブの後は 2人で ファミレス。
ドリンクバーで ねばった。
鈴ちゃんが バイトをしていた BIG4に、一緒に インディーズバンドを 観に行った 切っ掛けで、そこで私も働くようになった。
就職はしたけれど、ほどなくして会社を辞めてしまった私に BIG4だけのバイトでは もちろん
生活できず……なんとか独り暮らしを支えるために、早朝から昼にかけて もうひとつ 弁当屋で バイトを掛け持つことにした。
鈴ちゃんや、ashのメンバーも……BIG4に出入りしている子は バイトを 掛け持っている子が殆どで もしくは学生の子が 多かった。
私とシンは それぞれに 忙しく……スレ違いの生活の中で、なんとかお互いの距離を縮めることが 出来ないか無意識に 意識していたように思う。
それだけ、シンの手を握った あの日から 毎日が
切なくて……愛おしい日々だった。
*・゚゚・*:.。..。.・゚・*:.。. .。.・゚゚・*
「紗ぁー奈ぁー。 コレ 捨てといて。」
「はぁ?ていうか……自分で捨てなよぉ。
ゴミ箱。 ほら、ソコっ!」
「(笑) いいじゃん。」
空き缶を 握らされて…私って、シンの……何?
何となく 腑に落ちない状態で 空き缶を捨てようと
結局……動く 自分。
「ねぇ。まだ半分くらい中身 残ってるけど。」
「あげる。(笑) 」
そう言うと シンは ニット帽を ブンブン振り回しながら、Aスタに 戻って行く。
シンの……彼女?らしきものになって、2週間余り。
全く、彼をつかみきれない。
「あっ! 紗奈ぁー。帰り、送ってよ。
よろしくぅーーーー。」振り返って、笑う。
で。 私の返事を、聞かずにAスタへ 消える。
……悔しいけど、なんだか 彼のペース。
けれど。
“ いつ やらしてくれんのっ!” なんて
初っぱなから、飛ばした事を言ってきたわりに…
私とシンの距離は このコーラの缶を隔てて、間接キス止まりでいた。
中学生? ……。 まっ いいかっ。
いい。 それで 。
だって……いまだに シンの顔をまっすぐ見れないくらい……緊張する。
メンバーと 絡まって、じゃれ合っている 彼の姿を見ていると、
私も 触れたくなる。
触れてみたいと……思ったりする。
「 ……ちゃんっ! 紗奈ちゃんっ! 」
小川さんの声に、ハッと 我に返った。
「紗奈ちゃん? ……聞こえてる?」
「あっ!あぁ~スミマセンっ! ぜんっぜん。
大丈夫です。」
「明日、ライブ入ってるから ホールと楽屋の掃除頼んでいいかな。」
「はいっ!」
私は、シンに押し付けられた コーラの残りを 空にすると カウンターの隅に置いて、少し笑った。
まっ。いいか。
「ソレ……。彼女っていうの?(笑)
お母さん 世代で言うとーーーー
パシリ?、アッシー?、メッシー ? 」
鈴ちゃんは ホール横の楽屋のテーブルを 拭きながら 爆笑する。
「 う~ん。何か?よく分からないけど…メッシーではないような 気がする……。」
(メッシー: バブル期、ご飯を おごってくれるだけのためにいる異性のこと。)
私は、またまた 口を尖らせる。
鈴ちゃんは、ますます 手を叩いて 笑う。
何が そんなに おかしいのかも よくわからないケド……とにかく、面白いらしい。
「なんか……(笑) 意外。
もしかしてだけど……すごーく 大事にされてたりすんのかなぁ。」
鈴ちゃんは、なんだか嬉しそうに 私を のぞきこんだ。
「……アッシーとして、大事にってこと…?」
やっぱり 腑に落ちない。(悲)
「ねぇ 。ねぇ、デートとか どこ行くの?
シンってさぁ~電話とか……何しゃべるの?」
鈴ちゃんは、私の持っている長ホウキを 取り上げて 興味しんしんで 顔を近づけた。
「 デ……デート? してない。
電話……う~ん。? スタンプ……?」
「………………。」
なんか 言えよっ‼ 鈴ちゃーーーーん。(涙)
「面白ーーーーいっ!!
で。 何? シンって、どんな感じの スタンプ使うの? めっちゃ……イメージないわぁ~ 」
「えっ……。疲れた感じの ゆるいヤツ。
あと、寝てるヤツとか……オデコに縦線入ってるヤツとか……。
あっ……。 もう……いいよぉ~(涙) 」
鈴ちゃんは しゃがみこんで 肩を プルプルさせている。
笑いすぎーーーーっ!
彼女?なのか……?ただの 足なのか!?立場のはっきりしない私は、
ちっとも、笑えなーーーーーいっ!
「ごめん(笑) ごめん(笑) でも……シンらしい。
本人…悪気なく シンプルだし自由だよね。(笑)」
「何を考えてるのか? 私に興味が あるのか…?ないのか? 正直 全然 わかんないっ(苦笑)」
「噂だけど…相当 女に関してはヤンチャだしね。
嘘か?ホントか? わかんないけど(汗)」
「…………。 そう だよね。きっと。」
辛くなってきたぁーーーー(涙)
「こっちからっ! 攻める!」
「何をっ!!」
「抱かれてみないと わからないっ!」
「…………。それは……。」
「抱いてって言う。」
「無理。そこそこに…無理。」
「脱いじゃえばっ!!」
「死んでも……無理。!!」
だからーーーー。他人事だと思って笑いすぎだってばっーーーー!
触れてみないと……
抱かれてみないと……
確信できないこともある。
けれど……踏み込む怖さも 少しだけ知ってるから……。
シンとの距離を、そっとしておきたい 気持ちもある。
金沢市内の公園や 片町の隅っこで、一人路上ライブなんかを やっていた鈴ちゃんは、高校生の時から 金沢に出てきていた。
アコースティックギターを ぶら下げて、ベリーショートの彼女は遠目に見ると小柄な男の子にも見えた。
ダボついたサロペットに、肩が半分 ズリ落ちしているメンズ物のTシャツ。
その 小さな男の子に見える、女の子からは 超高音の 少し鼻にかかった 独特の歌声。
耳に残る鈴ちゃんの声と アコギは、二度目に街で
聞いた時、つい足を止めて 振り返った。
そして、いつしか ……鈴ちゃんの路上ライブの度に、私は 地面に腰をおろして 身体を揺らし、
一緒に歌を口ずさむように なった。
路上ライブの後は 2人で ファミレス。
ドリンクバーで ねばった。
鈴ちゃんが バイトをしていた BIG4に、一緒に インディーズバンドを 観に行った 切っ掛けで、そこで私も働くようになった。
就職はしたけれど、ほどなくして会社を辞めてしまった私に BIG4だけのバイトでは もちろん
生活できず……なんとか独り暮らしを支えるために、早朝から昼にかけて もうひとつ 弁当屋で バイトを掛け持つことにした。
鈴ちゃんや、ashのメンバーも……BIG4に出入りしている子は バイトを 掛け持っている子が殆どで もしくは学生の子が 多かった。
私とシンは それぞれに 忙しく……スレ違いの生活の中で、なんとかお互いの距離を縮めることが 出来ないか無意識に 意識していたように思う。
それだけ、シンの手を握った あの日から 毎日が
切なくて……愛おしい日々だった。
*・゚゚・*:.。..。.・゚・*:.。. .。.・゚゚・*
「紗ぁー奈ぁー。 コレ 捨てといて。」
「はぁ?ていうか……自分で捨てなよぉ。
ゴミ箱。 ほら、ソコっ!」
「(笑) いいじゃん。」
空き缶を 握らされて…私って、シンの……何?
何となく 腑に落ちない状態で 空き缶を捨てようと
結局……動く 自分。
「ねぇ。まだ半分くらい中身 残ってるけど。」
「あげる。(笑) 」
そう言うと シンは ニット帽を ブンブン振り回しながら、Aスタに 戻って行く。
シンの……彼女?らしきものになって、2週間余り。
全く、彼をつかみきれない。
「あっ! 紗奈ぁー。帰り、送ってよ。
よろしくぅーーーー。」振り返って、笑う。
で。 私の返事を、聞かずにAスタへ 消える。
……悔しいけど、なんだか 彼のペース。
けれど。
“ いつ やらしてくれんのっ!” なんて
初っぱなから、飛ばした事を言ってきたわりに…
私とシンの距離は このコーラの缶を隔てて、間接キス止まりでいた。
中学生? ……。 まっ いいかっ。
いい。 それで 。
だって……いまだに シンの顔をまっすぐ見れないくらい……緊張する。
メンバーと 絡まって、じゃれ合っている 彼の姿を見ていると、
私も 触れたくなる。
触れてみたいと……思ったりする。
「 ……ちゃんっ! 紗奈ちゃんっ! 」
小川さんの声に、ハッと 我に返った。
「紗奈ちゃん? ……聞こえてる?」
「あっ!あぁ~スミマセンっ! ぜんっぜん。
大丈夫です。」
「明日、ライブ入ってるから ホールと楽屋の掃除頼んでいいかな。」
「はいっ!」
私は、シンに押し付けられた コーラの残りを 空にすると カウンターの隅に置いて、少し笑った。
まっ。いいか。
「ソレ……。彼女っていうの?(笑)
お母さん 世代で言うとーーーー
パシリ?、アッシー?、メッシー ? 」
鈴ちゃんは ホール横の楽屋のテーブルを 拭きながら 爆笑する。
「 う~ん。何か?よく分からないけど…メッシーではないような 気がする……。」
(メッシー: バブル期、ご飯を おごってくれるだけのためにいる異性のこと。)
私は、またまた 口を尖らせる。
鈴ちゃんは、ますます 手を叩いて 笑う。
何が そんなに おかしいのかも よくわからないケド……とにかく、面白いらしい。
「なんか……(笑) 意外。
もしかしてだけど……すごーく 大事にされてたりすんのかなぁ。」
鈴ちゃんは、なんだか嬉しそうに 私を のぞきこんだ。
「……アッシーとして、大事にってこと…?」
やっぱり 腑に落ちない。(悲)
「ねぇ 。ねぇ、デートとか どこ行くの?
シンってさぁ~電話とか……何しゃべるの?」
鈴ちゃんは、私の持っている長ホウキを 取り上げて 興味しんしんで 顔を近づけた。
「 デ……デート? してない。
電話……う~ん。? スタンプ……?」
「………………。」
なんか 言えよっ‼ 鈴ちゃーーーーん。(涙)
「面白ーーーーいっ!!
で。 何? シンって、どんな感じの スタンプ使うの? めっちゃ……イメージないわぁ~ 」
「えっ……。疲れた感じの ゆるいヤツ。
あと、寝てるヤツとか……オデコに縦線入ってるヤツとか……。
あっ……。 もう……いいよぉ~(涙) 」
鈴ちゃんは しゃがみこんで 肩を プルプルさせている。
笑いすぎーーーーっ!
彼女?なのか……?ただの 足なのか!?立場のはっきりしない私は、
ちっとも、笑えなーーーーーいっ!
「ごめん(笑) ごめん(笑) でも……シンらしい。
本人…悪気なく シンプルだし自由だよね。(笑)」
「何を考えてるのか? 私に興味が あるのか…?ないのか? 正直 全然 わかんないっ(苦笑)」
「噂だけど…相当 女に関してはヤンチャだしね。
嘘か?ホントか? わかんないけど(汗)」
「…………。 そう だよね。きっと。」
辛くなってきたぁーーーー(涙)
「こっちからっ! 攻める!」
「何をっ!!」
「抱かれてみないと わからないっ!」
「…………。それは……。」
「抱いてって言う。」
「無理。そこそこに…無理。」
「脱いじゃえばっ!!」
「死んでも……無理。!!」
だからーーーー。他人事だと思って笑いすぎだってばっーーーー!
触れてみないと……
抱かれてみないと……
確信できないこともある。
けれど……踏み込む怖さも 少しだけ知ってるから……。
シンとの距離を、そっとしておきたい 気持ちもある。