No border ~雨も月も…君との距離も~
「 俺も……父さんも、残念ながら 持ってないよ。

仮に それっぽいのがあっても、せいぜい 相対音感ってやつで……。

持ってたとしたら、母さんの方だよ。」

「 やっぱり…二人とも素敵な人だよ。

羨ましいよ。

シンは……二人の才能を、受け継いでるっ。」

「 (笑) どーーかな。」

「 あるよ。 シンには 人に無い才能が……。

わかる……。

シンの歌は……必ず もう一度 聴きたくなる。

ハードな曲は、心を掴まれたまま 叫びたくなる。

バラードは……深くて、優しくて……傍に寄り添ってくれるでしょ。

私は、シンの 歌が 好きだよ。

ashが、好きだよ。」

「 褒めすぎじゃね……(笑)

これに乗る 勇気が少し出てきた。

……行かなきゃ。」

「 ………………う…ん。」

シンは、大きく深呼吸して 長く細く…息を吐く。

「 紗奈、待って。」

シンは そう言って 私の胸元のチョーカーに手を伸ばす。

首の後ろのフックを外すと、トップの指輪の部分を チェーンから外して、こっちを見る。

「 ……これ。」

「 うん。」

「 俺は、どんな風に変わっても…どこに居ても、

誰と居ても……

紗奈への 気持ちは変わらない。」

シンは、私の左手を持ち上げると 薬指に指輪をはめた。

「 ……?アレっ(笑) 入んないじゃんっ!! 」

「(汗)うそぉ~っ!入ったよっこの前…!!えっ…太った?!どうしよぉ……。」

「 嘘っ。(笑笑) 」

「 ……もーーー!(笑笑) 」

幸せだった。

切なかった。



苦しくて……苦しくて、 恋しかった。

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