No border ~雨も月も…君との距離も~
「 行って……シン。」

「 …………。 もう少し、顔 見せて。」

「 ううん。……もう…行ってってば…。」

「 こっち、向けよ。」

「 ……お願い、もう 行って…… 」

私は 薬指にはめた指輪を……右手で ぎゅっと 握りしめる。

シンの、顔を見れない。

見せて……と言われたら、尚の事…顔を上げられないし、見せられない。

天の邪鬼が……必死に涙を堪える。

「 チューしないぞっ。また、どこからでも撮られるから。」

「 ……うん。」

そう言ったくせに……

シンは、フッと周りを見渡して……私の頬に 鼻先を寄せて 短いキスをした。

私の頬に 伝う……一筋の涙と 同じタイミングで、シンは ヒラリと身体をかわして “かがやき “ に、飛び乗った。

こっちに振り返る 彼に……見られてしまわないように、急いでそれを拭う。

けれど……

けれど、微笑む シンの顔が みるみる 滲む。

「 インディーズでのラストライブに、帰って来るよ。1ヶ月なんて すぐだよ。」

嫌だ……

嫌だよ。

いい女を演じて……見送るって 決めてた。

だから……泣かないと。

決めていたのに。

シンが どんなに変わっても……どこにいても、誰といても……

また、私に逢いたいと そう思ってくれる、いい女で 見送りたいと思っていたのに。

滲んでいく…ブルーとゴールドのラインに シンは とても眩しくて、やっぱり 私に似合わないくらいカッコいい。
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