No border ~雨も月も…君との距離も~
12章 嫉妬
*・゚゚・*:.。..。.・゚・*:.。. .。.・゚゚・*

都内. 某スタジオ

「 シ~ン。 携帯……鳴ってるっ! 」

夏香は エンジニア ルームのガラス越しに、レコーディング途中の シンに声をかける。

プロデューサーの洋介さんと話が弾んでいるシンを、それ以上 呼ぶことに躊躇して…彼の携帯を覗き見る。

“ さな ” の 着信に、思わず それを手に取る。

分厚い防音のガラス越しに、シンの様子を 伺いながら……つい、通話ボタンを押していた。



ashが 上京して 2週間。

シンは 彼なりに…遠距離の私を気遣って、いつもより こまめにLINEにメッセージをくれたり、眠る前には 電話もくれた。

新しい拠点となる スタジオ内を、写メったり…なんだか 中途半端な自撮りを送ってきたり…(笑)

レコーディング中のashの 動画も。

どの写真も、シンの目に映った…東京。

そして…時々、東京の月が アップされた インスタ。

都会の片隅……

シンの 瞳に 映る 月明かり。

“ 金沢の月は、どんなですか?
good night! o((=゚ェ゚=))o ”

シンらしい……短いコメントに ファンの子たちは、長い文で答える。

私が答えるまでもなく…金沢の月は シンに伝わっている。

どこにいても、同じ月。

シンと同じ月を見ていると 少し安心した。
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