No border ~雨も月も…君との距離も~
レコーディングスタジオの扉が開いて、シンが入ってくる。

「 何? 電話? 鳴ってた。」

「 あっ……ううん。シンのじゃないよ。
誰のだろ……? ははっ…… 」

「あ……。そっ…… 」

着信履歴を 消去した罪悪感。

「 ん? 夏香、顔色 悪くね?」

「 …………。」

返事の代わりに、変な咳払いが出る。

「 どうした? 」

シンの……こういう所。

「 そ…そういうの、やめてよっ。
どうした?なーんて…心配しないでよ…。」

シンは、キョトンとして こっちを見る。

「 あ……ああ。 悪い……。」

優しいだけは、やっぱ……罪だよ。

「 謝るのも……やめてよっ…… 」

男のクセに すぐ謝る……そういう所、悔しいけど、逆に ヤられる。

「 後で、なんか食う?」

関係…ないよぉ。

「 …………。」

「 腹、減ってんじゃね? 」

バカな所も……好き。

「 …………(笑) 」

「 腹、減ったぁ~。俺、ラーメン食いてぇー。」

お腹空いたの、お前かよぉ~!って……可愛い所も 好き。

「 ……………………。肉っ。」

「 はぁ~? おごれないじゃん (苦笑)!」

「 じゃ、ラーメンで我慢するっ……(笑) 」

バカ…………バカ、バカ。

我慢する……。好きが 苦しすぎて 怖い。

優しくしないで……って思うのに、甘えてしまうよ。

あの子なんか……

紗奈ちゃんなんか、いなければ……いいのに。
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