No border ~雨も月も…君との距離も~
鈴ちゃんも 気づいたのか、身を乗り出すようにして 窓際に 詰め寄る。

「 ねぇ…紗奈 。あそこ カオリちゃんじゃない?」

「 うわぁ~。うん! 赤ちゃん、産まれたんだねぇ~♡ 」

彼女の隣には 体格のいい 黒人男性。

シャークさんだぁ。

カオリちゃん…笑ってる。

幸せそうに…笑ってる。

「 な~んなのっ! どの子もこの子も…見せつけてくるよね~(苦笑) 」

鈴ちゃんが、両手をパタパタ顔の前で 扇ぐ仕草をしながら口を 尖らせた。

他人の幸せって…こんなに羨ましいものなんだ。

幸せが もどかしい。

「 よかった……。カオリちゃん、笑ってる。
シンが 言った通り、シャークさんと同じ肌の赤ちゃん……。」

もどかしいくらい 幸せそう。

私、今……不幸だなんて 思ってない。

それなのに、どうしてこんなに 羨ましくて 切ないんだろう。

シンの傍にいれば……今、ここにシンがいれば……こんな気持ちには ならないのだろうか?

彼が 傍にいないだけで……不安で 寂しくて 幸せそうな誰かを 妬んでしまいそうになる。

彼が一人、傍にいないだけで こんなにも毎日の見え方も、感じ方も…違って見えるなんて…。

シンの肩先…

腕の温もり、

手のひらと一緒に触れる…シャツの袖口。
< 128 / 278 >

この作品をシェア

pagetop