No border ~雨も月も…君との距離も~
「 ……………………。」

夏香の固まる表情と 空のカクテルグラスを傾ける仕草に、ジェイは “ 図星か…!!“ と目を丸くする。

「 あ……違う…わね。ごめ~ん!失言、失言。」

「 ……………………。」

夏香の 酔った瞳は、わざとシンに背中を向けて 潤む。

「 やっぱ……。好きなんでしょ。」

ジェイは 仕方なくもう一杯、夏香の前にカクテルを 差し出す。

「 シンの曲……嫉妬して 聞けない。」

「 あ…らら。 まさかの歌詞に嫉妬?」

「 すごく いい曲なのに……聞けないの。」

「 重症……ね。」

「 わかってたんだけど。わかってたんだけどね……シンが どれだけ彼女を好きかって……。 だから、諦めるって決めたのに…。」

「 小娘、いい子ね。」

「 ……こんなの地獄だよねっ(苦笑) 」

「 辛い恋……してんのね。
分かるわよ、その地獄。 私も こんなんだから……恋なんて 地獄しかなかった。(苦笑) 」

「 いつか夢は叶うの? 夢って…恋って叶うの?」

「 私、嘘つけない性格なの。
叶うも、叶わないも……結果、生き地獄よっ♡
好きになっちゃったら、どいつも こいつも 生き地獄なのよっ。
恋愛市場から退かない限り…終わらない地獄。」

「 私……このままだったら、どっちかを殺しちゃうかも……。」

「 ちょ、ちょっとぉ…。それは、物騒~~~!それは……野獣~~~~~っ♡」

焦り気味の IKKOポーズのジェイを無視して 夏香はまた、ため息をつく。

「 ホント。殺しちゃう……かも。」

「よしなさーーいっ。よしなさーーいっ。
やっぱ 水、水にしとこ。
小娘っ!! 水っ!!」
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