No border ~雨も月も…君との距離も~
「 ミナトさん…ギターも弾くんですか?
エンジニアのイメージしかなかった……。」

「 (笑) 元は ベーシストだよ。まぁ…マルチミュージシャンって 呼んでもらっても いいッスけど。」

「 ……はっ。ははっ(笑) 」

「 あっ!鈴、バカにしてんなぁ~。タクにベース教えたの 俺だぞぉ~。」

東京で、金沢の人に会うと ほっとする。

「 じゃぁ。ヤボ用済ませて 後で俺も 合流するわぁ~。 気をつけて。」

ミナトさんに手を振ると、私と鈴ちゃんは 夜の新宿の路地を抜けて 電車を何とか乗り継いで……打ち上げ会場の お店のビルに、辿り着いた。

不馴れな都会の夜に

“ RADY MUSHROOMS ” のロゴを見つけると…

「 あった。あった。 ココっ! 」と、どちらともなく 小走りになる。

冷静になると……怪しいネームの店だけど、辿り着けて 安心した。

もうすぐ 逢える。

シンは、どんな顔をするだろう……。

驚くカナ。

うん。 きっと驚く……。すごく(笑)

もしかして、 迷惑……カナ。

それとも…

「 逢いたかった。」って言ってくれたら…

どんなに いいだろう。

そんな風に思って開けた、モノクロの市松模様の扉。

店内の ヒップホップ。

人々の ざわめき。

鈴ちゃんの背中越しに中を覗こうとすると…鈴ちゃんは すぐに肘で 私の身体を止めた。

「 ……とっ…?鈴ちゃん? 」

鈴ちゃんが、一歩…二歩…下がる。

「 な…何?」

金沢を出る時に、二人で一緒に選んだTシャツを着た シンの膝に腰を乗せて…

激しく唇を合わす……シンと女の人……。

えっ……?

ウソ……。

彼女の唇は、シンの唇を吸い上げて クスッと彼を見つめて 笑う。

夏香……さん?

真っ赤な唇、薄ピンクの頬が色っぽくて……アルコールなのか? 興奮のせいなのか……。

……混乱して シンが見えない。見えてるのに、見えない。

シン…………

どこ?

心で 叫ぶ。
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