No border ~雨も月も…君との距離も~
*・゚゚・*:.。..。.・゚・*:.。. .。.・゚゚・*

「 ……!! 夏香っ……おいっ!」

シンは、フラつく夏香を 支える。

「 いいじゃん…。 別に。 昔はしてたじゃん。」

「 酔いすぎだろっ……。」

黒目が とろん…とする夏香に 呆れた様子で シンは大きく息を吐く。

「 なんなのっ!! シン……?
どういう事よっ! 寄りを戻したとでも言うの?
それとも…何?
今のは、東京のご挨拶ですかっ!!
へぇ~~っ! N.Y でも あんなのしないわぁ~。」

鈴ちゃんが 二人の間に入る。

「 ちげぇ~よっ……。 落ち着けって。」

「 はぁ~? 無理だし、落ち着いてなんていられないし。
こんなの ひどいよっ!!
私たち……どんな想いで ここに来たと思う…?」

「 だから…… 誤解だって。」

「 どこがっ?どの辺りがっ……誤解なの?」

「 誤解だっつってっだろっ!!」

鈴ちゃんの目から 涙が 溢れる。

「 あ…っと。 ごめん、だから…本当に… 」

そう言って、追いかけようと入口へ走る シンの行く手を 夏香が 止める。

「 ダメっ!! 行かないでっ。

シン……。

行ったら、死ぬからっ。」

「 オイッ!! 夏香っ…… 」

「 あの窓から 飛び降りる。」

夏香の指差す 窓からは ビルの間に ……

月。

黒い雲が 動いて…顔を出す。

足が、動かない。

足首に……見えない足枷が 食い込む。

月が……見てる。

さっきまで 何とも思わなかった ラップの曲が、複雑な音階に変わって……頭の中を掻き乱す。

「 行かないで……シン。」

「 ………やめろよ… 俺に…どうしろって… 」

立ち止まるシンを見兼ねて 翔平が立ち上がる。

「 俺が…行くわっ。 紗奈ちゃん、追っかけっから…。」

「 翔平っ!! 俺が行くっ。」

シンは、翔平の手首を掴む。

「 紗奈ちゃん、泣かすなって 言っただろーがっ。
……俺が行く。」

翔平は、真っ直ぐにシンを見つめて、目力で “ 手を放せっ! ” と訴えた。

月と…音階の波が シンを飲み込む。


< 137 / 278 >

この作品をシェア

pagetop