No border ~雨も月も…君との距離も~
*・゚゚・*:.。..。.・゚・*:.。. .。.・゚゚・*

もと来た道を 戻ることしか出来ない私は、駅の高架下の広場のベンチに、ヘタっ……と腰を下ろした。

思わず……コンクリートの梁の間から 夜空を見上げる。

東京タワー……見えない。

スカイツリー……見えない。

レインボーブリッジも……見えない。

見えないよぉ……。

東京がまるごと…そんなものに囲まれてるわけじゃない……かぁ。

息を整えるのと、唾を飲む作業を しばらく繰り返して…自分で自分を落ち着かせた。

携帯の着信音と一緒に “ シン ” の名前が光る。

今、話したら…私は きっと嘘をつく。

相手を想ってつく嘘ではなくて…その場しのぎのついてはいけない 嘘。

そんな気がする。

今、誰とも話したくない。

この馴れない東京の空気に…ふと 気づかされる。

久しぶりに、自分という小さな存在の現実に 向き合った気がする。

恋という、高鳴りから 久しぶりに落ち着いてみる。

シンと 私……やっぱり、

この先、ずっと一緒にいる想像が出来ないよ。

先が……見えないよ。

彼さえ 傍に居てくれたら、何も要らない…なんて、嘘。

キレイごと。

結婚式、すごくよかった。

いつか…お嫁さんになりたいと 思った。

赤ちゃんだって…抱いてみたいと思った。

カオリちゃんの笑顔に迷いなんてなくて…眩しすぎた。

シンといても…

シンの傍に いたって、

私の夢は叶えられない。

シンの夢見る世界に、私は小さすぎて…私の生きれる未来が見えない。

見えないよ。

交わる…未来が想像できない。
< 143 / 278 >

この作品をシェア

pagetop