No border ~雨も月も…君との距離も~
*・゚゚・*:.。..。.・゚・*:.。. .。.・゚゚・*

はぁ…… はぁ……。

赤信号で やっと足を止めると、シンのこめかみを今頃になって アルコールがズキズキさせる。

交差点。

渡った先は 駅の高架下の広場。

赤信号と横断歩道のストライプが 頭の中で変にリンクする。

二人を見つけて、一瞬……

視界が 歪む。

夏香の写メを、もう一度 突きつけられたかと思った。

“ これでも、庇うの?……”

紗奈と付き合う前から…翔平の気持ちに気づいていた。

あの頃の俺……サイテーだと思う。

翔平が紗奈に 優しく話かけるから…すごく大事そうな距離を見ていると 気になった。

その、ボーダーが すごく気になって……

気がつくと 彼女が欲しくなった。

初ライブのあの日、俺の襟足に触れたのは…紗奈。不思議な感情に火をつけたのは 翔平。

自分の彼女を抱き締める 親友の腕。

サイテーなのは…よく分かってた。

けど、

お前じゃん……火をつけたの。

「 マジかよっ。何だよっ……。」

二人と自分の間に、いくつものボーダーが拒む。

青信号が移り込む…横断歩道。

蒼く降り注ぐ、月の光。


シンは…ガードレールのポールに蹴りを一髪。

「 ……いっ痛ぁ……っ」

響く乾いた音に 通行人が振り返って、そそくさとシンから距離をとる。

てか……不審者かよっ。 俺。

「 ……ってぇ。頭も足も……痛てぇし。」

入れる隙間のない二人を目の前にして、赤の他人の冷たい視線なんて……

どうでもいい。

「 ワンピ……紫の。

まだ、かわいいって言ってないじゃん。

似合ってるって……俺、まだ伝えてないじゃんよぉ……。」

耳に当てたままだった、スマホの手を降ろして…シンは高架下の支柱、

二人から見えない位置にズルズルと座り込んだ。

「 頭…… 痛ってぇ……。」


どうして、

どうして…想いはこんなに行き違うんだろう。

好きは、時に素直じゃない。

好きだから……素直が悔しくなる。

< 147 / 278 >

この作品をシェア

pagetop