No border ~雨も月も…君との距離も~
14章 夏と花火と通り雨
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シンの 切ない程の高音は、インディーズ ラストのツアー最終日、BIG4に響き渡る。

天をつんざくような……その音に ……

誰かが泣いたら、それは伝染する。

思わず……泣けてくる。

たかが恋する歌が……これほど切なく、熱く…優しく 伝わるのは シンの生まれ持った 神々しいまでの才能なのだと…見せつけられた。

……圧巻。

二十歳の 男の子にそう言ってしまうのも 不思議だけれど、シンの歌う歌は そういう歌だった。


8月

インディーズでのラストライブ。

最終日。

金沢BIG4

Open pm 6:00~ Start pm6:30


その日、ashは 本当に金沢のバンドの 伝説になった……。


200人しか入れない会場は、金沢中の若者がここに集結したのではないかと思う程の人だかりがBIG4の周りを 取り囲んでいた。

チケットを倍額で買った子や チケットの無い子。

その場にいた人は 皆、一目でいいからashが見たくて…ホールから溢れる音に耳を澄ませて、その音でサークルを作ったりした。

店長が防音の重たい扉を解放したせいで…

音は 小さな街を支配した。

外で合唱が始まった頃には、パトカーまで出動する騒ぎになり…

ライブ後には、貧血や過呼吸で救急に運ばれた子もいたらしい。

大きな会場が 必要なのはわかっていた。

けれど…皆、ここで この場所で…この曲が聴きたかった。

圧死しそうな程の熱気の中で、ashはとても力強くて…激しくて、切なくて、カッコよくて…。

私と鈴ちゃんは ライブの後も しばらく …その場に立ち尽くした。

スタッフではなく、お客さんとして見たashに唖然とした。

東京での一ヶ月の間に すごくメジャーらしくなったashのパフォーマンスに 言葉が出ないくらい感動した。

アンコールの声。

コール&レスポンス…

メンバーの汗。

スポットライトの輝く行き先…

シンの高く天を差す…指先。


この夢の ど真ん中で…私たちは 震えた。

無限大の夢が、そこにはあると…

その手を伸ばせば、

すぐ、そこに…。

すぐそこに…あると。

信じていた。
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