No border ~雨も月も…君との距離も~
何故だろう……

ここ怒るとこ?

たまに自分の中に 不思議な感情が通りすぎる時がある。

私はシンの彼女……とは別に、一人のファンになる時がある。

自分でも よくわからない感覚。

シンが好きな人がいると すごく嬉しい。

“ おんなじ ” って、普通に嬉しい。

不思議……ここ怒るとこだよね。

こうして夏香さんと 並んで見る花火を悪くないと思ったりする。

こんなに華やかに 燃え散る…

一瞬の “ 火花 ” 。

宣戦布告。

もう…逃げられない、ここから 引けない自分がいる。

きっと…夏香さんも おんなじ。

夜風が夏香さんの前髪を 押し上げる。

今日、一番の大きな音に 私たちの中で 何かが燃え上がる。

ドキっ……が 苦しくて、今頃込み上げてくるのがわかる。

「 熱ちぃーーーーーっ!!」

私と夏香さんの間に割り込むように シンがフワッと柵から身を乗り出して 夜空へと手のひらを伸ばす。

触れようとしても触れられない火の粉を握りしめたような……

「 火の粉、捕まえたっ!」

「 うそぉ~!」

「 ええっ!! 火傷するよっ!」

私は慌てて シンの手のひらを握って 指を広げる。

「 ん、なわけ…(笑) ないやん。」

「 な、わけ… ないね(笑) 」

「 ホント、ふざけてばっかりっ。」

夏香さんも苦笑する。

振り返るとashのメンバーに加わってミナトさん、洋介さん、小川さんが笑っていた。

連発で乱れ咲く花火の音と光の中、

つまずいたり…絡まったり…

今にも掴めそうなほどに 夜に降る光の粉に 心が踊る。

少し皆から 離れてみたのは、ほんの束の間……

二人きりで見たかった花火。

空調の大きな換気扇の裏側。

どちらからともなく合わせた唇を……

誰かに見られた……かも?

分からない。

瞳を閉じたら、そこにはシンの唇しか感じないから……

真夏の熱気のなごりに…混じり合う シンの香り。


私たちの未来は……このまま永遠に……

真っ直ぐ。

この先の 現実から目を逸らしてでも 笑っていたかった。

笑っていたい。

皆がいたから……あなたが 笑うから……

永遠だと思っていたよ。



ashが伝説になったあの夏の日を、

私は……忘れない。
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