No border ~雨も月も…君との距離も~
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ママと私は 夢の城となるビルの オープンテラスを回ってから 中に入った。

「 すごっ! 中……広いですね。」

「 もともと 飲食店だったらしいから…厨房はすぐに使えそうだし、まだ内装はコンクリートの打ちっぱなしなんだけど…1から考えようと思ってるの。
紗奈ちゃんも、一緒に考えてもらえると 嬉しいんだけどっ。」

「 本当ですかっ! いいんですか…私で。」

「 それとも……今すぐに シン君のお嫁ちゃんになっちゃう? (笑) 」

「 ……(苦笑) そんな……。」

私の顔に 一気に血が登るのがわかる。

「 …そんな未来が あったら いいんですけど…。」

と、苦笑しながら あの自由でヤンチャでマイペース…全く先の見えないシンと夫婦になる想像なんて、ひとつも……出来ない。

ふと、鈴ちゃんの夢を思い出した。


“ タクのお嫁さんになる夢は…とりあえず、置いといて…(笑)
私、ネイリストになりたいなぁ…と思って。”


私の………夢は?

「 紗奈ちゃんには 料理のセンスあると思うよ、私…。」

ママは コンクリートの壁に手のひらを置いて、私に振り返る。

「 本気で…料理の勉強してみたら? 」

「 料理…夢…。 私の夢?」

久しぶりに 胸が鳴った。

ワクワク……したっ!

私は私の夢を 追いかけられたら。

叶えられたら…。

たとえ、遠く離れていても シンと同じ歩幅で 歩くことが出来るかも…。

同じ 未来へ向かう先に、シンの笑顔があって欲しい。

いつかのシンの言葉が返ってくる。


『 一生……コンビニ弁当でいいと思ってた。
なのに…さぁ。 ツアーの間、ずっと紗奈の弁当が食べたいって思ってた。』


もっと、強くなりたい。

葛藤の中にいるからこそ、夢を見たい。

夢を…叶えたい。

自分の道を見つけて、もっと強くなりたい。



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