No border ~雨も月も…君との距離も~
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「 ったく…。仕方ねぇなぁ……。」

ミナトは、眩しい朝に目を擦る。

結局、シンをアパートまで 送り届けて…そこで自分も 寝落ちした…っていう。

最悪なパターン。

このまま イベント会場へ向かう…ってのは 死んでも嫌で、一旦 自宅へ戻るために、始発を待っている。

ミナトは人も疎らなホームのベンチに、ドカッと足を広げて座ると スマホを耳にあてた。

「 あっ…… 紗奈ちゃん。

ミナトだけど、今 大丈夫?」

「 ミナトさん? おはようございます。

こんなに早くから、どうしたんですか? 」

「 (笑) 久しぶり。 元気そうでよかった。

鈴ちゃんが BIG4を辞めた後、 紗奈ちゃんまで辞めちゃったって聞いて……。」

「 あ……。 うん。

ashも、鈴ちゃんもいなくなって…私も そこそこ ダメージっていうか…。

BIG4にいると 辛くて、仕事にならなかったんです。

情けないですよね。(失笑)

て、いうか? どうしたんですか?

急に…。」

「 こっちにも、紗奈ちゃんよりダメージな奴がいて……。」

「 ……えっ? 」

「 いらん お節介やと 思いつつ……。」

「 …………まさか。 シン……? 」

「 (苦笑) ははっ。正解。」

ミナトは ビルの間から朝日がこぼれる光景に、瞳を潤ませる。

寝不足……か?

少し、朝焼けにセンチな感覚なのか……?

自分でもよく分からないけれど、光のスポットがやたらと滲む。

「お節介……って言われるかもしれんけど、なんか、あいつ……ほっとけなくてさぁ。
あいつに……もう一度、歌って欲しいっていうか、なんていうか……。
紗奈ちゃんに言っても 仕方がない気もするけど…。」

「 ミナト…さん。」

「 壁って言うのかな~、こういうのを言うんだろうな……。

人生で乗り越えないといけない壁。

ありきたりだけど……。」

「 ミナトさん、シンは……大丈夫ですか?」

「 紗奈ちゃんにしか シンの壁は 壊せない気がして……。」

「 ………………。」

いつかの夏香さんの言葉が 耳から離れない。

“ ashを 壊さないでっ!! ”

「 私に、そんな力…ありませんってば。(苦笑) 」

「 今、どこにいるの? 」

「 ん~。今、バスを待ってます。

試験会場に…向かうところです。」

「 試験? 」

「 うん… 調理師免許、取ろうと思って。

勉強、全然してないから 今回は とりあえずダメ元

なんですけど…。」

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