No border ~雨も月も…君との距離も~
オレンジの 明るすぎる照明の下、全裸の自分が恥ずかしくて…


すぐに シンの体に、自分の体を寄せる。

くっつける。


彼に……すごく見られているような気がして…

その隙間が出来ないくらいに しがみつく。


シャワーの水滴が 滑り落ちるたびに、二人の体の隙間を探そうとする。


侵入させたくない。


だから…雫にすら 邪魔されたくないから、

きついくらいに 、ピタリと体を合わせる。

シンの背中に腕を這わす。


「 俺といても……紗奈は 幸せになれないよ…。」

「 …………。」

思わず……体が固まる。

私は シンに伝わるように、思い切り首を横に振る。

「 なんで……?なんで そんな事言うの…?」

「 俺……もしかして このまま……歌えないかもしれない……。」

「 ……シン……。」

「 歌えない……俺って……他に何も…無くて。」

「 ………………。」


この 背中を、滑るように…撫でる。


「 なんで、タクは……死んで…。俺は、生きてんだろう。
歌えない……俺は、もしかして……
生きてんのに……死んでるのかなって。」

胸が……きしむ。

「 ……何もなくていいよ。 私にはシンがいればそれでいいよ……。」

「 歌うしか……。 紗奈を……幸せにできる方法が分からない。」

私から 体を離して、シャワーを頭から浴びながら俯く シンの背中に、私はやっぱり体を寄せる。

流れ落ちる雫と舞い上がる熱っぽい蒸気に、シンが泣いているように感じて……私は彼の背中に、雫と共に唇を滑らす。

水蒸気に……唇に……シンの身体が反応する。

「 シンは、シンだよ。
シンに 触れることができる……生きてるって、それだけで……。」

息を詰まらせる私にシンは こちらに向き直ると…

優しいキスを降らせた。

シャワーの激しい音に…吐息と唇の音が溶ける。

生きてる。

当たり前だけど…当たり前の事が、切ない。

シンが 生きていてくれるなら それでいい。





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