No border ~雨も月も…君との距離も~
3章 月の視線
12月24日

シンへのプレゼントが決まらないまま……イブになってしまった。

この日までの 2人の帰り道、

サプライズなんて 出来そうにないので……

「 何が欲しい?」と1度、聞いてみた。

即答で……

「 紗奈っ!(笑) 」 と、軽く答える…シン。

あまりにも 軽いので、

「 …………。ヤだよっ!! 」

なんて 心にも無い事を言ってしまう。

素直じゃない……(泣) 私って。

だから……当日になっても、シンへのプレゼントは迷走中。

…………。(悩) …………。(マジ悩)

今日は、BIG4の 中にも外にも すごい数の人が集まっていた。

私と鈴ちゃんは、臨時に設けた 長テーブルの受け付けで チケットのもぎりや、ビラ配り、出演バンドのCD販売に追われていた。

夕方の早い時間から ライブがスタートして すでにお祭り騒ぎのお客さんや 出演者で 、スタジオ前の長イスも……ホールへ続く階段も……
人、人、人、で ごった返していた。

ashのメンバーも 出番はラストだけれど、昼前からリハに入ってBIG4内を、フラフラしていた。

彼らの誰か 一人が 動く度に、女の子がザワつく。

特にシンは……人混みでも一際 目立っていた。

他に類を見ない……ルックスと存在感。 たぶん彼が黙っていてもそれらは ついて回って……この小さな箱の中は シンを不自由にさせていた。

今日は控え室として使われている、スタジオからシンが、顔を出すと…女の子たちはその行方をふさいで 何やら話しかけ、プレゼントや手紙を渡しているのがわかる。

…………。クリスマスだもんね。

プレゼントを決められない……
自分の女子力の無さに……ため息がでる。


チケットの半券が500枚を越えた頃、少し受け付けが落ち着いてきた。

ここからは、目当てのバンドのタイムテーブルに合わせてお客さんが 入れ代わって、出たり……入ったり…を繰り返す。

やっと 顔をあげることのできた 私と鈴ちゃんは、
ガラス扉の外に 粉雪がチラチラと 降り始めたことに気づいた。

「あっ。ホワイトクリスマス……。」

私は、段ボールから CDを取り出しながら、ガラス越しの粉雪に 目をやる。

「 ホントだぁ。私、去年もココで バイトしててさぁ~、タクと二人のクリスマスって してないなぁ。(笑)」

鈴ちゃんが、ぼやく。

でも、顔が笑っていて 幸せそう。

明らかに……ノロケ(笑)
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