No border ~雨も月も…君との距離も~
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南向きの小さな窓は 明るくなったり 急に影ってみたり……気まぐれな 昼下がり。

耳をつまんだり、鼻を噛んだり…色々手を尽くしても起きないシンをベッドに置いて、シャワーの後の髪を緩めに結ぶ。

私は 翔平君のアパートへ 向かうことにした。

ラインも電話にも返事のない翔平君が心配だった。

それに、シンと話していて やっぱり感じるのはシンにとって翔平君は…唯一 無二の存在。

二人とも 多くは言わないけれど、感じる。

雲の無い月の晩の翌日は、雨は降らない。

そう思っていたけれど…そうでもないらしい。

それとも知らぬ間に、月に笠が かかっていたのか…?

さっきまで 陽の光が差していたのに…通り雨。

通り雨は…キライです。

この間、買ったばかりの傘は まだ使うのは2度目。

翔平君の インスタは、昨日もアップされていて 彼の好きな洋楽のレコード…ドーナッツ版が レトロに加工されていた。

翔平君、今 どこにいるんだろう…。

今 何を想っているんだろう。

単純にバンドへの想いを聞いてみたかった。

私は 翔平君のアパートの入口で足を止めると 傘の水滴を払った。

そして、それをクルクル巻き上げて 顔を上げると…そこに翔平君が立っていた。

「 あっ……。」

「 あっ……。」

「 紗奈ちゃん……どうしたの?」

「 翔平君こそ、その格好。どこか行ってたの?」

スーツケースに大きめのリュックサックを担いで、半袖Tシャツにビーチサンダル。

涼しくなってきた 今日この頃の季節には、少しズレた格好の翔平君に、思わず笑いが込み上げてきた。

「 んーーーー。 ちょっとソコまで。(笑) 」

「 めっちゃ、夏じゃん……(笑) 」

「(笑)て、いうか……ついてねぇ~。雨には降られるし…今日、特別に気温…低い気がするよ。」

「 翔平君、風邪引いちゃうよ。 」

「 とりあえず、中…入れよ。」

「 うん。」

翔平君は、背中を丸めて大袈裟に震えてみせると、クスッと笑って部屋の鍵を 開けた。
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