No border ~雨も月も…君との距離も~
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ー 金沢 オーガニック.GARDEN ー

「 もう、東京から帰って来ないかと思った。(笑) 」

「 まさか……です。(笑)

試験、すみませんでした。

来年……もっと ちゃんと勉強して 受け直します。」

「 (笑) そうね。」

ママは 試作品のメンチカツの新しいソースを何種類か作って、首をひねっては味見を繰り返していた。

私は それをメモにとったり…写真に撮ったり…たまにママの変顔を写メって笑った。

「 おいしいっ!! ママっ、コレいけるっ。」

「 ホントーーー♪ 」

アレルギーのお客さんにも 対応出来るように改良された小麦粉、卵を使わずに できているメンチカツに感動して 味見のつもりが…1個 完食してしまった。

「 紗奈ちゃん、いいの…?」

ママはスマホをメンチカツに向けたまま、もう片方の手で照明のスタンドライトの角度を変える。

「 えっ……? 」

「 彼、置いて帰って来ちゃって。」

「 ……私に 壁を壊せる 力なんて やっぱりありませんもん。
きっと……彼が一番 わかってる。」

「 そうね……。」

私は、これ以上突っ込まれる前にママに答えを突き返した。

「 私は……私の夢も大事なんです。

叶えましょう。 ママの夢と私の夢。」

私とママは どちらかともなく両手を上げて ハイタッチをする。

「 うん。叶えよう!! 」

あと、数日で 新しい店舗の内装工事が始まる。


夢は大きければ大きいほど……何かを犠牲にしなければならないと……

誰かが言った。

失うものが……

必ずあると。



「 紗奈だけ、幸せにできればいい……。」
その言葉が……今でも私を幸せにする。



あの頃……


私は、シンの人生を縛りたくない。

そして、

自分の人生を誰かに頼りたくないと思っていた。


あんなに…大好きだったのに…

ずっと、傍にいたかったのに…




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