No border ~雨も月も…君との距離も~
喉を詰まらせるシンに、ミナトは 小さく頭を下げる。

「 ごめんな。勝手なことかも……って思ったけど、俺はどうしても ashをこのまま葬れなくて……。

誰よりも……ファンだったから。」

「 そうっ…。ミナト君、石川から東京に来る度に 金沢のashはすごいっ……て。

自分のことみたいに 自慢してさっ……。」

「 俺の力じゃ非力だって……分かってるけど。」

「 そんなことないです。

地図なんてない…ホントに無いんです。

もう…失ったものに こだわらないって決めたから…。

今、目の前にあるものを 最高のものにするって……

そう 思っていた ところです。

ashへの想いも……

出ない声も……

いっそ、受け入れよう…って。

0 (ゼロ)から 始めよう……って。」

そう言ったシンの肩に、誰かが ポンと手を掛けた。

「 よっしゃーーーっ!! どうせ0やぁーーー!!

無くすもんなんて 何んもねぇわぁ~~!! 」

シンが振り返ると、そこには タケルが 敬礼ポーズで笑っていた。

「 タケル…………。」

「 大学……今度こそ 辞めてきた。」

「 東京駅で……拾ってきた。(笑) 」

ミナトがタケルの肩を抱いて、ニッと笑う。

「 ……(笑) タケル。 いいのかよ……。

一生、後悔するかもしれないよ……。」

「 上等じゃねぇ~かっ!!

俺には……コイツと…… 」

タケルは ドラムセットを撫でる。

「 それから……仲間がいた。」

「 ……ああ。 そっか……。

全く 0 じゃないかも……って 今、思った。」

シンは、タケルの顔を見る。

「 ……うん。

大学に戻って、俺……どないするんやろって考えた。

どう 生きる?って考えた。

一瞬にして 無くした命の前で、俺たちは何も出来ずに取り残されて……

大切な一部を 簡単に……本当に…簡単に 無くしてしまって…

傷付いて……。

考えても いなかった。

ashがashじゃ なくなるなんて……。」

「 うん……。考えてもなかったから……

傷付いた。 すごく……傷付いた。」

「 一瞬で無くなるかもしれない明日に……後悔したくないよ。

生きてるからには……大切に生きていたい。

自分を誤魔化さないで、ありのまま……。

もし、明日…俺が死んでも アイツに後悔は無いって、誰かが言ってくれるだろう……生き方。

ここは(バンド)、俺の生きる道なんだ。」

「 タケル……。」

シンの目に、熱いものが 膨れ上がる。

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