No border ~雨も月も…君との距離も~
傷ついてなんかいない。

胸が……痛むだけ。 切ないだけ……。

シンからも、翔平君からも……同じ苦しみを感じる。

「 あいつ……翔平は 紗奈のことが好きだから。」

「 あの日……翔平君も苦しんでた。もがいてた。

ashという居場所がなくなって……。

シンと同じ。同じだったよ。」

「 俺と……同じ?」



未来に怯えて…温もりが 少しだけ欲しいと思っただけ。


「 シン。

タクちゃんのいたashには…もう戻れないけど、4人で歩いてきた道は ちゃんと残ってるよ。

シンは、月だって克服できたじゃん。

お母さんを亡くした日から…ずっと、居場所を探して……。

シンならできるよ。

また、新しい自分を出せる場所をきっと見つける。

シンも…翔平君も。

二人なら、ちゃんと見つけられる……」

「 ……紗奈。」

「 ごめんなさい……。翔平君の家に行ったことを言わなかったこと。

でも……信じて欲しいのは、シンと翔平君は今までと何も変わらないってこと。

シンは独りじゃないと思った。

もしかしたら…シンよりも翔平君の方が孤独を感じてるのかも……。 」

「 翔平が……?」

「 シン……大好きだよ。」

「 ……な…なんだよ 急に……。」

「 私が、言いたいのはそれだけだよ……(笑) 」

私に嫉妬して……私のために怒ってくれるシンの顔を、見てみたいよ。

少し上から(笑)……見てみたいよ。

だって、嫉妬するのは いつも私の方で…悔しいじゃん。

「 ……怒って、ごめん。 俺もだよ。」

電話の向こう。

少し照れながら ケラッと笑う彼を想像して、イジワルになりたくなる。

「 俺も……何?」

「 俺も、……だよ。」

「 だからっ、俺も何? (笑) 」

「 …………(笑) メンドクセーーーっ! 」

「 俺も…の 続きが聞きたいのっ! 」

「 ……ん…だよ。 俺も、大好きだよ…… (笑) 」

「 ……(笑) うん…。」

切れない電話は 切らないことにした。

切りたくない電話は 切らないことにした。

だけど、バイト中。

私は、“ 切るね…… ” を何度か繰り返して、

通話ボタンをオフにして、厨房へ急いだ。


あの日のことは……あの日、シンの部屋のシャワーで流した。

シンの唇の痕が、あれから しばらく私の身体に残っていたから……

こうして、いつもの毎日が ある。





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