No border ~雨も月も…君との距離も~
「 何? 話って。」

「 俺さぁ……。砂漠の真ん中で くたばりそうになってたら 現地の兵士に 連れてかれて……」

「 ……だからっ(笑)

バカじゃねぇーーのっ! 」

「 殺されると思った。

次の日、ニュース出るかなって…… 」

「 ……ヤバイ だろーがっ。 ……ったく。」

「 銃、突き付けられて…死んだって思った。」

シンは、フッと 真顔で翔平を見る。

「 で。 結局、そいつら 政府の兵士で……保護されただけ だったんだけど……

死ぬなぁーーーって思った時、俺、オカンでもなく…親父でもなく…

紗奈ちゃんでもなく……。 」

翔平も 真顔で、シンを見る。

「 お前のこと、一番先に 想った。」

「 なん……だよ。気持ち悪りぃーだろっ……。」

「 お前と、もう一度……バンドやりたかったって。」


……翔平……


「 俺、勘違いしてた。」

「 …………。」

「お前は、俺の欲しいところを 全部、かっさらっていくって。

……勝手に そう思ってた。

そういうの、嫉妬って言うかな。

適当にやってるように見えるお前に、腹が立つ時も あったり……。

…かといって、完璧にやりこなす お前にもっと苛立って…………。

軽く やってるように見える お前を見てると、結局……才能かって。

曲だって、本当は俺が 作らなくても “ 絶対音感 ” を持ってるお前なら 作れるんだろうな……って。

努力って 何だろうなって。 」

「 ……翔平、 俺は お前の曲が好きだから……

本当に ただ…素直にそう思ってる。」

「 あの日……タクが スタジオから出ていった日…。

俺が 一番、あいつの気持ちに寄り添えたはずなのに。

才能なんて…俺にもない。

自信だって ホントはなくて …いつもビクビクしてる。」

「 もう……。あの日のことは…… 」

「 うん。 分かってる。

違ってた……。 死にそうになって わかった。

俺が……欲しいのは、お前だってこと…。」

「 ……だからっ(笑)

気持ちわりぃーーーって。」

苦笑しながら 翔平の告白に 胸が痛くなる。


ー 絶対音感 ー

相対音感……だと思いたかった。

才能という形での 使い方をまだ 知らない。

だから…いつも それに苦しめられてきたように思う。

俺も 怯えてきた。

世の中に落ちている 音階に……憑依される。

独りでいると それは…もう、すごい力で飲み込んでくる。

世の中(ここは) 不協和音ばかり……だから。
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