No border ~雨も月も…君との距離も~
「 紗奈ちゃんのことも……

お前に、好きな女を 獲られたような気がしてた。

けど……そうじゃなかった。

最近、やっと 分かった 気がする。

好きな人に……お前を 獲られたことが 何より、もどかしかった。」

「 ……翔平……。」

「 お前が……俺の隣で歌うから、俺は俺以上の力を出せた。

お前が 歌ってくれないと……

俺の曲は、息をしないんだ。

流れていく毎日の中で……俺の曲は ただの消耗品で、

辛かった。

何かを 探せば……探すほど、ashにしか居場所のない自分に気づいて、

辛かった。」

「 ……翔平。 同じだよ。

俺も……同じだった。

やろうとすれば……するほど、

前へ進もうと 思えば……思うほど、

声が 出なくなった。」

「 紗奈ちゃんのことが 好きだった。

けれど……

その紗奈ちゃんに、お前を持って行かれるんじゃないかって……

変だな。(苦笑)

それが…一番、キツかった。」

「 …(笑)。 早く気づけよっ! 抱いてやるよっ(笑) 」

「 …(笑)。それは…無理だ。そういう趣味は無い。」

「 …(笑)。 アホすぎやな、翔平。」

「 …(笑) だなっ…。 お前を持って行かれる イコール

……俺の 持っている力が、

突然…不安定に思えたんだ。」



月が 怖かった。

けれど、自分は もしかして月のような人間なのではないか…と。

翔平が…いないと輝けない。

けれど 人は皆、同じ不安を どこかで抱えていて……

「 ……なぁ 翔平……

お前の 隣で歌わせてよ。

俺も お前がいないと……声が 出ない。(笑)

突然、不安定になるんだ。」



誰だって、独りでは輝けない……。



「 (笑) しゃーねぇーなっ! 今度、抱いてやるよ。」

「 (笑) いらねぇーよっ! 」

シンと翔平は、お互いに 顔を背けて お互いに同じタイミングで 吹き出した。


お前しか、いない。

月は必ず……

朝日を 連れてくる。

明けない 夜はないんだ。


「 ちょ~~とっ。2人で、何 コショコショしてんのっ!! 」

ジェイの口調をマネした タケルが、2人を見つけて割り込んで来る。

相当…酔っているタケルに、2人は わちゃわちゃと絡まって……

笑って……

床に倒れ込んで、笑い転げた。




< 221 / 278 >

この作品をシェア

pagetop